本編動画
2025年5月16日に、以下の目次で「ほぼ週刊、AI動向のイマとミライ」動画を配信しました。
1:22 (1)今週の概観と、ジャーナリストの視点
5:14 (2)Sam Altman氏が語るOpenAIの新ビジョン
18:09 (3)20歳と35歳のChatGPTの使い方ギャップが面白い
20:40 (4)シリコンバレーの真ん中から見た今年のAI業界
36:23 (5)エージェント群組織からエージェント群経済へ
43:25 (6)日本企業は米AI大手とどう戦うべきか
47:44 (7)技術解説:エージェントを完璧なレベルにまで引き上げる2つの方法
各チャプターの概要は以下の通りです。
(1)今週の概観と、ジャーナリストの視点
・今週はSequoia Capitalの年次イベント「AI Ascent 2025」より
(2)Sam Altman氏が語るOpenAIの新ビジョン
https://youtu.be/ctcMA6chfDY?si=6Cs8T7MjM1LaOsf3
・OpenAIがAPI提供を止めるという予測があったけど、API提供を止めないし、パーソナルAIを目指すみたい
・「インターネットの重要なプラットフォームを構築できる立ち位置にいる。そのためには、いろいろなサービスに使われるような人々のパーソナルAIにならなければならない」「API提供も消費者向けサービスも1つに合体させたようなものにしたいと思っている」(Sam Altman氏)←Altman氏がこのビジョンを語るのは初
・「将来のインターネットにおけるHTTPのレベルでの新しいプロトコルのようなもの」とあるが、Sam Altman氏自身、まだこのビジョンを完全に言語化出来ていないもよう
・「まず音声を本当に素晴らしいものにします。そして本当に人間レベルの音声が実現できれば、音声がまったく新しい種類のデバイスを可能にすると思っています」「最近いくつか大きなブレイクスルーがありましたし、それを世に出せるのが楽しみです」(Sam Altman氏)
(3)20歳と35歳のChatGPTの使い方ギャップが面白い
・「AIに対するジェネレーションギャップがすごい」「年配者は、chatGPTをGoogle検索の代わりに使う。20代から30代は人生の相談相手として、大学生はコンピューターの基本ソフトのように使う」(Sam Altman氏)
(4)シリコンバレーの真ん中から見た今年のAI業界
・世界の検索エンジン市場におけるGoogleのシェアが、2024年10月~12月の3カ月間連続で90%の大台を割った
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1654785.html
・iPhoneでのGoogle検索利用が22年間で初めて減少
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08D4Z0Y5A500C2000000/
・簡単な自然言語の命令文でプログラミングが可能に
・大規模言語モデルの事前学習が伸び悩み始めたが、新たな進化の担い手が登場
①Reasoning Models:論理的に思考し問題を解決するための仕組みを持ったAIモデル
②Synthetic Data(合成データ):リアルなデータの特性やパターンを模倣しつつ、プライバシーやセキュリティの懸念を回避するために使われる
③Tool Use:AIが外部のツールやリソースを利用してタスクを遂行する能力のこと。AI単体の処理を超え、外部の機能やデータを活用してより複雑な問題を解決する
④Agentic Scaffolding:AIがタスクを分解し、優先順位をつけ、実行するのを助ける「足場(scaffolding)」「枠組み」
・MCPがエージェントの業界標準プロトコルへ
・今年後半では、AIモデルが次世代のモデルを自分で開発するようになり、その性能や開発速度は指数関数的に伸びていく
・「あと18ヶ月でAIがほぼ全てのコードを書くようになる」(Mark Zuckerberg氏)
https://youtu.be/rYXeQbTuVl0?si=1lbwMIUrp115FU6z
・Sequoia Capital パートナーSonya Huang氏が特に着目するのが、人間を超えるAIエージェントの登場
https://youtu.be/v9JBMnxuPX8?si=po362YfeOVvWJ9nq&t=761
・「私たちは今、「豊富さの時代」に突入しようとしています」「私たちは、コーディングエージェントの進化とそれがテクノロジー業界にもたらす影響に注目しています。またそれが、AIによって他の産業がどのように変化していくのかを示す前触れになるとも考えています」(Sonya Huang氏)
(5)エージェント群組織からエージェント群経済へ
・Konstantine Buhler氏(Sequoia Capital パートナー)の講演
https://youtu.be/v9JBMnxuPX8?si=nnQqdzBcaxq5tLP5&t=1239
・「エージェントが互いに協調または競合するエージェント・スウォーム(Agent Swarm:もしくはエージェント・ネットワーク)になり、数年後にはエージェント経済へと成熟していく。エージェント経済では、エージェントは情報の伝達だけでなく、資源の移転や取引を行い、信頼性を理解し、人間と協力して機能する。この経済は人間を排除しない。中心は人間。エージェントは人と協働し、人もエージェントと協働する」(Konstantine Buhler氏)
・エージェント経済実現のための技術的課題:永続的なアイデンティティ(Persistent identity)、シームレスな通信プロトコル(Seamless communication protocols)、セキュリティ(Security)
・個人への影響:確率的思考(Stochastic mindset)、マネジメント思考(Management mindset)、より大きなレバレッジと著しく低い確実性
(6)日本企業は米AI大手とどう戦うべきか
・Pat Grady氏(Sequoia Capital パートナー)の講演
https://youtu.be/v9JBMnxuPX8?si=L_kgnF9GFgeEWK7W
・①ビションを持つ、②ソリューションでツールに対抗、③ぐるぐるモデルで高機能に対抗、④ドメイン特化で勝負、⑤業界が分かる社員をセールス担当に、⑥エンジニアを常駐させる
・「関税、金利などのマクロ経済の問題はどうでもいい。テクノロジーの津波は、マーケットのどんな変化も圧倒する。無視してよし」(Pat Grady氏)
(7)技術解説:エージェントを完璧なレベルにまで引き上げる2つの方法
・方法①:オーケストレーション+厳格な評価 代表的プロダクト例:Harvey(法律)、Listen-Labs(医療会話)、Cursor(AI コーディング補助)など、LangGraph + LangSmith で CI/CD を回して信頼性を稼ぐケースが多い
・方法②:タスク終端までチューニングされたエージェント 代表的プロダクト例:OpenAI Deep Research : Webブラウジング+Pythonツールを組み合わせ、長時間の調査を自律実行(E2E RL で訓練)、Cognition Devin(ソフトウェア実装)、Expo(セキュリティテスト)、Traversal(DevOps トラブルシューティング)など
・スタート地点としては方法① が早く仮説検証できる→ その際に評価パイプラインを整備しておくと、後で集まった軌跡データを方法②の訓練データに流用できる。長期的な差別化・コスト最適化を狙うなら方法② に移行し、モデル自体を資産化すると強い。多くの企業は “方法① → データ蓄積 → 方法②” へ段階的に進む、というのが現状の勝ちパターンだとSonya Huang氏は示唆している
・方法①:モジュールを組み合わせ、テストで品質を稼ぐ「オーケストレーション指向」、方法②:行動ログを餌にモデルそのものを鍛え上げる「E2E ファインチューニング指向」。初速と柔軟性を取るか、最終的な強みとコスト効率を取るか──フェーズやデータ資産の有無で最適解は変わる。この二分法を頭に入れておくと、自社エージェント戦略のロードマップが描きやすくなる
個別テーマ解説動画
また、各テーマに分割した動画も配信しました。興味のあるトピックに応じてご覧ください。
まずはここからチェック!今のAI業界まとめ【切抜解説】シリコンバレーの真ん中から見た2025年のAI業界
0:00 AIが産業界に影響を与え始めた
1:50 音声がブレイクしてきた2025年
2:37 簡単な自然言語の命令文でプログラミングが可能に
3:57 LLMの事前学習の伸び悩みと、新たな進化の担い手の登場
5:28 ①Reasoning Models
6:23 ②Synthetic Data(合成データ)
7:28 ③Tool Use
8:18 ④Agentic Scaffolding
9:13 MCP(Model Context Protocol)がエージェントの業界標準プロトコルへ
10:00 2025年後半、AIの性能や開発速度は指数関数的に伸びていく
10:57 キラーアプリも続々と登場
11:50 人間を超えるAIエージェントの登場
12:34 「自分らしさ」が希少な資産として評価される時代へ
※サムネイル画像はJohn CondeによるPixabay画像を活用
【切抜解説】OpenAIの新戦略、サム・アルトマン氏インタビューより
0:00 OpenAIが目指すのはAI時代の「基本ソフト」のような存在
3:21 API提供も消費者向けサービスも1つに合体させたようなものにしたい
6:43 アルトマン氏もまだ完全に言語化できていないもよう
9:56 ボイス関連で、最近いくつかの大きなブレイクスルーがあったらしい
12:54 20歳と35歳のChatGPTの使い方ギャップが面白い
※サムネイル画像はGerd AltmannによるPixabay画像を活用
登壇者情報

遠藤 太一郎
株式会社カナメプロジェクト CEO
国立大学法人東京学芸大学 教育AI研究プログラム 教授
AI歴25年。18歳からAIプログラミングを始め、米国ミネソタ大学大学院在学中に起業し、AIを用いたサービス提供を開始。AIに関する実装、論文調査、システム設計、ビジネスコンサル、教育等幅広く手がけた後、AIスタートアップのエクサウィザーズに参画し、技術専門役員としてAI部門を統括。上場後、独立し、現在は株式会社カナメプロジェクトCEOとして様々なAI/DAO/データ活用/DX関連のプロジェクトを支援する。国際コーチング連盟ACC/DAO総研 Founder等

湯川 鶴章
株式会社エクサウィザーズ AI新聞 編集長
米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。