本編動画
2025年5月23日に、以下の目次で「ほぼ週刊、AI動向のイマとミライ」動画を配信しました。
1:01 (1)今週のトピック
3:37 (2)個人的にはOpenAI o3が最高!
8:56 (3)OpenAIよりGoogleの方が優勢!?
19:46 (4)OpenAIの新戦略をo3に解説してもらったら、やっぱり凄かった
26:33 (5)生産性を売るのではなく、成果を売る
29:00 (6)始まった「AI失業」!AIはエンジニアの仕事をどう代替し始めたか
33:23 (7)Agentリテラシーは、ビジネスパーソン必須スキルに
38:18 (8)Ambient Agent:目立たないけどきっちり仕事する同僚AIの存在
43:57 (9)AlphaEvolve:AI自らがアルゴリズムレベルの発見ができる!
54:59 (10)エンジニアから見たOpenAI Codexの所感
各チャプターの概要は以下の通りです。
(1)今週のトピック
(2)個人的にはOpenAI o3が最高!
・o3:日本語で質問しても外国語でもリサーチしてくれる、検索などのツールをLLMの内側に持っている、o3もDeep Researchと同様にトレーニングされているので簡単な調査ならo3の方が便利 etc…
(3)OpenAIよりGoogleの方が優勢!?
・競争は基盤モデルの性能からコスパへ
・GoogleのSundar Pichai CEOも「コスパがいいのは、学習も推論もTPUを含む自前のインフラで行ってるから」と、インフラに注力している旨を発言
https://youtu.be/ReGC2GtWFp4?si=AwU9cEj6bl6k3hVr&t=1030
・AIデータセンター構築・運用の専門会社CrusoeのChase Lochmiller氏は、AIの実現には、エネルギーとデータセンターの変革が不可欠とする。「前はチップの入手が困難でしたが、現在は電力、鋼材、データセンターのスペースが主な制約となっている」
・OpenAI等が進めるStargateが難航:データセンターのフレームワーク、電気システム、冷却機構に必要な鉄鋼、アルミニウム、銅といった主要資材のコスト上昇にも直面。関税が「需要破壊」を引き起こし、ソフトウェアやクラウドへの支出削減につながり、AIの導入を鈍化させ、企業はサプライチェーンの抜本的な見直しを迫られる可能性がある
https://www.perplexity.ai/discover/top/openais-500b-stargate-data-cen-i1XDoSjSRqyj.75nPm.lrA
・電力確保が重要に
・日本版Stargate「OpenAI for Countries」も。SB OpenAI Japanという合弁会社を通じて日本国内でのAIインフラ構築を進めていく
https://openai.com/global-affairs/openai-for-countries/
・トランプ氏のサウジアラビア訪問中に、両国間で総額6,000億ドル(約88兆円)に上る経済協力や投資の合意が発表。Google、DataVolt、Oracle、Salesforce、AMD、Uberを含む複数のテクノロジー企業が、両国で革新的なテクノロジーに合計800億ドルを投資することに合意
https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/05/fact-sheet-president-donald-j-trump-secures-historic-600-billion-investment-commitment-in-saudi-arabia/
(4)OpenAIの新戦略をo3に解説してもらったら、やっぱり凄かった
・Altman氏が語った断片的なビジョン:核になるのは“コア AI サブスクリプション”、体験面では“AI 時代の OS”、裏側では“HTTP レベルの新プロトコル”、開発者向けには“API / SDK”
・ユーザー側:AI ファースト OS 体験、ネットワーク側:AI ネイティブな Web2.0 → Web3.0 への橋渡し、ビジネスモデル:SaaS+プラットフォーム収益の二層構造
・「個人が常に携帯する“パーソナル AI”を中心に、Web 全体が AI エージェント対応で再配線される新プラットフォーム」という未来像が、Sam Altman氏のインタビューから推察される
(5)生産性を売るのではなく、成果を売る
・「弁護士の生産性を上げるツールを開発しても市場は大きく拡大しない。例えば独禁法の解説など、高コストの労働が以前行っていた非常に価値のあるビジネス上の問題を解決する場合、市場規模は巨大になります(Bret Taylor氏 of Sierra)
(6)始まった「AI失業」!AIはエンジニアの仕事をどう代替し始めたか
・米Microsoftが6000人のレイオフを発表。エンジニアとプロダクトマネジャーが多い
https://apnews.com/article/microsoft-layoffs-d1f2de54ebad6f099deac8fbd3375835
・Salesforceが1000人レイオフ。AI関連営業職2000人採用。「今年はエンジニアを追加採用しない」(Marc Benioff氏)
https://www.crn.com/news/ai/2025/salesforce-to-lay-off-over-1-000-employees-amid-ai-hiring-spree?utm_source=chatgpt.com&itc=refresh
・「AI エージェントが“何でもできる”世界では、希少資源が知識そのものから〈オーケストレーション能力〉へシフトする」(Shyamal Hitesh Anadkat 氏「Age of the Agent Orchestrator」)
https://www.linkedin.com/pulse/age-agent-orchestrator-shyamal-hitesh-anadkat-mapkc
(7)Agentリテラシーは、ビジネスパーソン必須スキルに
・専門知識の民主化:価値は「ループ設計力」へ(ループ=「タスク実行 → 検証 → 改善」を自律的に回すワークフロー)。「◯◯の専門家」より「安価な計算資源・API を束ねて成果を出せる人」が希少になる
・資源配分の最適化が競争軸になり、Agentリテラシーが次世代の Excel スキルになる
・「プロンプト作成・報酬設計・A/B テスト・ログ監査 が全社員にとっての必須リテラシーになる」「旧来プロセスに AI を後付けする企業は、人間→AI→人間…の過剰チェックで複雑性に埋もれる一方、エージェントを前提にワークフローを再発明する企業は指数関数的に成長できる」(Shyamal Hitesh Anadkat 氏)
(8)Ambient Agent:目立たないけどきっちり仕事する同僚AIの存在
・Ambient Agent:LangChain CEO Harrison Chase氏 が Sequoia Capital の AI Ascent で紹介した新カテゴリー。ポイントは「プロンプトではなく シグナル に反応する、常時稼働型のエージェント」
https://www.productmarketfit.tech/p/the-ai-founders-playbook
・「イベント駆動ゆえに latency 制約が緩み、ツール呼び出しや反省フェーズを含む複雑タスクが組める」(Harrison Chase氏)
・Human-in-the-Loop(HITL)が要となる:Notify(重要イベントの通知)、Question(不足情報の質問)、Review(危険操作の承認/編集)という 3 パターンを中核に据え、「HITL は品質と信頼を担保し、学習フィードバックにもなる」
https://blog.langchain.dev/introducing-ambient-agents/
・Slack では通知が埋もれる課題から、エージェントとの対話をメール受信箱のように一元管理できる Agent Inbox という新しいUIを提案
https://www.sequoiacap.com/podcast/training-data-harrison-chase-2/
・インフラ設計図(LangGraph が示す要件):永続化レイヤー、スケーラブル実行、可観測性
(9)AlphaEvolve:AI自らがアルゴリズムレベルの発見ができる!
・「進化アルゴリズム」によって、AI自らがアルゴリズムレベルの発見ができるように:56年ぶりの行列積ブレークスルーや未解決数学問題への適用など
・「凄さ」のポイント:未知のアルゴリズム(4×4 行列積 48 乗算など)を発見、数万ステップの試行錯誤を人手ゼロ・数日で回す高速探索、Google 内部スタック(TPU 回路・Gemini カーネル)にも実用投入済み
・Prompt sampler、LLMs ensamble、Evaluators pool、Program database、それぞれの解説
https://deepmind.google/discover/blog/alphaevolve-a-gemini-powered-coding-agent-for-designing-advanced-algorithms/
・Prompt sampler・LLMs ensambleで突然変異させて、良かったものを残すというループをひたすら繰り返すイメージ
(10)エンジニアから見たOpenAI Codexの所感
登壇者情報

遠藤 太一郎
株式会社カナメプロジェクト CEO
国立大学法人東京学芸大学 教育AI研究プログラム 教授
AI歴25年。18歳からAIプログラミングを始め、米国ミネソタ大学大学院在学中に起業し、AIを用いたサービス提供を開始。AIに関する実装、論文調査、システム設計、ビジネスコンサル、教育等幅広く手がけた後、AIスタートアップのエクサウィザーズに参画し、技術専門役員としてAI部門を統括。上場後、独立し、現在は株式会社カナメプロジェクトCEOとして様々なAI/DAO/データ活用/DX関連のプロジェクトを支援する。国際コーチング連盟ACC/DAO総研 Founder等

湯川 鶴章
株式会社エクサウィザーズ AI新聞 編集長
米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。