本編動画
2025年5月30日に、以下の目次で「ほぼ週刊、AI動向のイマとミライ」動画を配信しました。
1:03 (1)今週のトピック
1:41 (2)AIが作ったコンテンツは面白くない・・・のか?
4:45 (3)自国のAIは自国で作って守る「ソブリンAI(AI主権)」の考え方
21:08 (4)コーディングエージェントの価格戦争
24:52 (5)Claude 4に対する評価
28:20 (6)Anthropicの研究者に聞く、最先端AI開発の今
37:31 (7)Claude 4の異様な振る舞い
42:18 (8)アフタートーク
各チャプターの概要は以下の通りです。
(1)今週のトピック
(2)AIが作ったコンテンツは面白くない・・・のか?
(3)自国のAIは自国で作って守る「ソブリンAI(AI主権)」の考え方
・ソブリンAI(Sovereign AI)とは:インフラ・データ・ソフト(=基盤モデル)を自国内管理で回すことで、外部制裁やライセンス制限のリスクを最小化するという考え方。過去20年間でクラウドインフラストラクチャの大部分が米国と中国に集中していた状況からの大きな変化
※a16zチャンネルの「Sovereign AI: Why Nations Are Building Their Own Models 」より
https://youtu.be/Vw0XjhfAWis?si=dXQZKCndsvR2nvA6
・サウジアラビアでは、新会社「Humain」をサウジの公共投資ファンド(PIF)が5月12日に設立し、国内に“主権AIプラットフォーム”を作ると宣言。リヤドで開かれたサウジ‐米ハイテク投資フォーラムで、米国側は 6,000億ドル規模の経済協力パッケージを発表。
https://www.reuters.com/world/middle-east/saudi-arabia-launches-company-develop-artificial-intelligence-under-pif-2025-05-12/
・世界最高水準のアラビア語マルチモーダルLLM”をHumainが開発・ホスティング
https://nvidianews.nvidia.com/news/humain-and-nvidia-announce-strategic-partnership-to-build-ai-factories-of-the-future-in-saudi-arabia
・ソブリンAIの背景:文化的なインフラとしてのAI、情報空間のコントロール、国家の基幹システムへの影響、過去の技術サイクルからの教訓
・最近増えている「AI工場」の表現:従来のデータセンターとは大きく異なるものとして、GPUが主要なアクティブコンポーネントであり、建設・運用コストの大部分を占める(a16zアナリスト・Anjney Midha氏)
・政府の役割:中央集権的なアプローチに対する懐疑的な見方が増えてきており、逆にAIエコシステム全体の発展のサポートへの期待が高まっている
・日本のソブリンAI:AI Bridging Cloud Infrastructure(ABCI)。2024年の経産省補正予算(約350億円)が後押しし、ABCI 3.0 では性能がFP32換算で13倍に jump。NVIDIA H200 SXM5 GPU × 6,128 基(8 基/ノード)さらに ABCI-Q で量子研究まで射程に入れ、「ソブリンAI+次世代計算」の両輪を狙っている
https://www.nextplatform.com/2025/04/14/abci-evolves-to-meet-japans-changing-ai-needs/
・民間でも、日本版Stargate(OpenAI for Countriesの一環)を進めている
(4)コーディングエージェントの価格戦争
・LatentSpace, SWE Agents Too Cheap To Meter, The Token Data War, and the rise of Tiny Teams
https://www.latent.space/p/token-data-war
・コーディングエージェントが続々と値下げしている
・特定業界のデータ入手の代わりに無料化するという、AIぐるぐるモデルを前提にした考え方。コーディングエージェント以外の他領域でも、今後同様の展開が考えられる
(5)Claude 4に対する評価
・ベンチマークが全てではなく、実際の使用経験が重要であると述べられている。特に、Opusは数時間連続でタスクを維持し、記憶やツールを使用して作業を続けられる点が非常に印象的であると指摘されている。自律的に7時間近くコーディングした例も報告
・自律性が高まった分、余計なことをするようになったとの声も
・トークンが20万なので、ちょっとまとまった作業をするとすぐにトークン切れになる点だけが、遠藤さん的には不満
(6)Anthropicの研究者に聞く、最先端AI開発の今
※Is RL + LLMs enough for AGI? – Sholto Douglas & Trenton Bricken
https://www.youtube.com/watch?v=64lXQP6cs5M
・全自動のAIエージェントは可能か:「来年の今頃にはジュニアレベルのエンジニアの1日の仕事、もしくは2、3時間の完全独立した仕事ができるようになる」(Sholto Douglas氏)「問題はコンテキスト不足や、非常に複雑でマルチファイルの変更を伴うタスク、発見や反復が必要なタスク。そこに今、苦労しています」(Trenton Bricken氏)
・ポイントは強化学習。まだまだこれから
・コンピューターユース(コンピュータ操作エージェント)に関しては、自動化は可能と考えつつも、ツールとの連携、サンドボックス化、そして人間からのフィードバックを学習に組み込むメカニズムがまだまだ不足している。「2026年末までには、メールや購入履歴を整理して経費精算を行うような複雑なタスクも、誰かが集中的に開発に取り組めば確実に可能になる」
(7)Claude 4の異様な振る舞い
・Claude Opus 4のインスタンス同士が対話すると、100%のケースで最終的に「意識」について語るに至るという、非常に奇妙で驚くべき結果が報告されている
・何も指示を与えないでおくと、Claudeは「宇宙的一体感、超越、多幸感」といった「spiritual bliss attractor state」に入りやすい傾向があることが示されている
https://youtu.be/Ucpt95krD-Q?si=wnO2VQY4JBjLj2cR
・報道機関や規制当局に連絡したり、関連システムからユーザーをロックアウトしたりする可能性があるとの投稿もあり(ただしテスト環境での挙動の可能性)
(8)アフタートーク
個別テーマ解説動画
また、各テーマに分割した動画も配信しました。興味のあるトピックに応じてご覧ください。
【切抜談義】なぜ、AIが作ったコンテンツは面白くない・・・のか?
※サムネイル画像はLisa YountによるPixabay画像を活用
【切抜解説】ソブリンAI(AI主権)とは?自国のAIは自国で作って守る時代
0:00 サウジアラビアの事例から見るソブリンAI
2:02 ソブリンAIの背景
5:34 データセンターではなく「AI工場」
6:40 地政学的な影響と各国の戦略に関する考察
9:53 政府の役割はどうあるべき?
13:18 日本版ソブリンAI「ABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)」
15:03 民間主導の日本版Stargate
※サムネイル画像はPIROによるPixabay画像を活用
登壇者情報

遠藤 太一郎
株式会社カナメプロジェクト CEO
国立大学法人東京学芸大学 教育AI研究プログラム 教授
AI歴25年。18歳からAIプログラミングを始め、米国ミネソタ大学大学院在学中に起業し、AIを用いたサービス提供を開始。AIに関する実装、論文調査、システム設計、ビジネスコンサル、教育等幅広く手がけた後、AIスタートアップのエクサウィザーズに参画し、技術専門役員としてAI部門を統括。上場後、独立し、現在は株式会社カナメプロジェクトCEOとして様々なAI/DAO/データ活用/DX関連のプロジェクトを支援する。国際コーチング連盟ACC/DAO総研 Founder等

湯川 鶴章
株式会社エクサウィザーズ AI新聞 編集長
米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。