Metaが143億ドル出資したScale AIのCEOを追いながら、注目されるCursorの急成長の要因を分析し、AI時代のアプリの特徴を考えた一週間(2025年6月20日配信版)

目次

本編動画

2025年6月20日に、以下の目次で「ほぼ週刊、AI動向のイマとミライ」動画を配信しました。

1:04 (1)今週は少人数勉強会(湯川塾)での公開収録
1:36 (2)驚愕の急成長Cursorの正体 
25:25 (3)モバイル時代とAI時代のアプリはこんなに違う 
32:03 (4)米企業AI活用の「今」
48:59 (5)MetaがScale.aiに143億ドル!Wang氏って何者?

各チャプターの概要は以下の通りです。

(1)今週は少人数勉強会(湯川塾)での公開収録  

(2)驚愕の急成長Cursorの正体
・Anyspace社(CEO、Michael Truell氏)、2022年MITの学生らによって設立。 従業員60人。年間経常収益(ARR)は5億ドル
・① AIネイティブ IDE アーキテクチャ、② 専用モデル&マルチモデル戦略、 ③ プロダクトレッドグロース(“vibe coding”)、 ④ 開発速度とドッグフーディング、 ⑤ 資本注入と採用ブランド
・「エンジニアリングが「ロジックデザイナー」のようになり、コードではなく意図をより明確に指定することでソフトウェアを構築するという、全く新しいプログラミング方法の構築を目指す」「「コードの後の世界」では、「美的感覚」(taste)がますます価値を持つスキルとなる。エンジニアは、現在の「注意深さ」よりも、どのようなソフトウェアを構築すべきかという「何をするか」に焦点を当てるようになる」(Michael Truell氏)
https://www.youtube.com/watch?v=En5cSXgGvZM  

(3)モバイル時代とAI時代のアプリはこんなに違う
・モバイル時代のアプリは無料か数百円程度の課金がベースだったが、AI時代のアプリは月額3000円が当たり前
・ChatGPTの成功例:2024春:600万人、2024秋:1100万人、2024年末:1550万人、2025春:2000万人
https://www.theverge.com/openai/640894/chatgpt-has-hit-20-million-paid-subscribers?utm_source=chatgpt.com
・Cursorの例:有料会員:36万人、無料ユーザー:100万人、コンバージョン率:約36%
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-04-07/cursor-an-ai-coding-assistant-draws-a-million-users-without-even-trying?utm_source=chatgpt.com&embedded-checkout=true
・ElevenLabs:月額5〜1320ドルの多段階課金、有料会員数:非公開だが30万〜40万人と推定
・Cursor:6ヶ月でARR 1億ドル→5億ドル、Google(2000年→2002年)2年間で収益1.99億→3.5億ドル(1.5倍)、Cursorは半年で5倍
・Andreessen Horowitzの分析
https://www.youtube.com/watch?v=fySodSi4aUU
・なぜここまで早く売上が伸びるのか?  

(4)米企業AI活用の「今」
・シリコンバレーの老舗ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の調査レポート「16 Changes to AI in the Enterprise: 2025 Edition(大企業AI利用、16の変化)」
https://a16z.com/ai-enterprise-2025/
1 予算拡大の一途、減速の兆しなし
2 生成AIは「実験」から「恒常的な必要経費」へ
3 LLMの差別化が進み、企業はマルチモデル戦略へ
4 LLMは、領域ごとに勝者が存在
5 小規模モデルではコスパいいクローズドモデルが人気
6 モデルの性能向上でファインチューニング離れ
7 リーズニングモデルに高まる期待
8 モデルの性能はほぼ同じ。性能より価格とセキュリティ重視に
9 モデルメーカーへの信頼向上
10 エージェントワークフローの導入でモデル切り替え困難に
11 外部ベンチマークを参照した上で自社基準で判断
12 自社開発からサードパーティーアプリ購入へ
13 成果報酬課金に対し、まだ不信感
14 生成AI最初のキラー用途はコーディングエージェント
15 C向けB向けもアーリーアダプターの口コミで牽引
16 最新技術をベースにした企業が老舗企業を追い抜く  

(5)MetaがScale.aiに143億ドル!Wang氏って何者?
・Scale AI とは:2016年創業(サンフランシスコ)、CEO Alexandr Wang氏(28)・注目の論客、従業員1,500名・世界数十万人のギグワーカー、画像・動画・LiDAR・音声・テキストのデータラベリング/品質評価、顧客:OpenAI、Google、Microsoft、国防総省、自動運転企業など
・CEOインタビュー例
https://www.youtube.com/watch?v=sWXkN9JXwR0
・Meta が巨額投資を決めた理由:
①AIスーパーインテリジェンス部門の人材獲得(WangCEOが部門長に)。Wang氏がAI競争の周辺から主戦場に
②Llama次世代モデル向けに高品質 RLHF データを囲い込む
③競合(Google/Microsoft)へのデータ供給を間接ブロック
④規制リスクを避ける49%出資スキーム(議決権なし株)
⑤メタバース/AR製品の3Dデータ学習とのシナジー
⑥Zuckerberg氏は創業・経営者なので大胆な動きが可能
・要はZuckerberg氏とWang氏の思惑が一致:Llamaはコスパでクローズドモデルに苦戦、Yann LeCun氏はLLMをベースにしたAGI研究に興味なし、Wang氏は内部メモで「超知能を創る千載一遇の機会」と表明
https://www.theinformation.com/articles/meta-agreed-pay-scale-ai-wanted-money?utm_campaign=article_email&utm_content=article-15208&utm_medium=email&utm_source=sg&rc=qgaeex
https://timesofindia.indiatimes.com/technology/tech-news/facebook-parent-meta-hires-28-year-old-scale-ai-founder-alexandr-wang-as-superintelligence-chief/articleshow/121820702.cms
・懸念点:Super-Intelligence Labに優秀な人材を引き抜こうとするも断られる、Metaのライバル社がScaleとの契約打ち切りでScaleの業績悪化、合成データやRL(強化学習)と検証済み報酬によるモデルの改善でScaleのような手作業の価値が低下(実際昨年の収益目標を達成できず)、スタートアップの人間がMetaのような大企業の社風の中でやっていけるのか
https://www.youtube.com/watch?v=0TgkOkK7CIQ
・Wang氏のASIに関する論文:Dan Hendrycks・Eric Schmidt・Alexandr Wang 共著「Superintelligence Strategy: Expert Version」 2025 年 3 月 7 日公開
https://arxiv.org/abs/2503.05628

個別テーマ解説動画

また、各テーマに分割した動画も配信しました。興味のあるトピックに応じてご覧ください。

【切抜解説】Metaが143億ドル出資したScale AIのCEO・Alexandr Wang氏って何者?

0:00 Scale AIとは
3:40 Alexandr Wang氏ってどんな人?
5:04 ラベリング(アノテーション)とは?
6:38 Metaが巨額投資を決めた理由
9:52 「超知能を創る千載一遇の機会」
11:58 業界へのインパクト
13:14 考えられる懸念点
14:37 Wang氏のASIに関する論文

※サムネイル画像はGerd AltmannによるPixabay画像を活用

【切抜解説】急成長で話題沸騰の「Cursor」とは? 運営会社・Anysphere社CEOへのインタビューから探る

0:00 年間経常収益が立ち上げからわずか20カ月で1億ドルを達成
4:00 IDE(統合開発環境)全体をAI前提で再設計
11:35 エンジニアリングは「ロジックデザイナー」のようになる
14:57 「コードの後の世界」では「美的感覚(taste)」スキルの価値が高まる
21:07 意外に保守的な数字で語られるAI化の範囲

※サムネイル画像はu_vplf3ftkczによるPixabay画像を活用

【切抜解説】アメリカの大企業はこの1年でAIをどのように使うようになったのか?(a16zレポートより)

0:00 16 Changes to AI in the Enterprise: 2025 Edition
https://a16z.com/ai-enterprise-2025/
0:20 1:予算拡大の一途、減速の兆しなし
0:38 2:生成AIは「実験」から「恒常的な必要経費」へ
0:51 3:LLMの差別化が進み、企業はマルチモデル戦略へ
1:45 4:LLMは、領域ごとに勝者が存在
2:36 5:小規模モデルではコスパいいクローズドモデルが人気
5:18 6:モデルの性能向上でファインチューニング離れ
7:00 7:リーズニングモデルに高まる期待
8:09 8:モデルの性能はほぼ同じ。性能より価格とセキュリティ重視に
10:22 9:モデルメーカーへの信頼向上
11:16 10:エージェントワークフローの導入でモデル切り替え困難に
12:21 11:外部ベンチマークを参照した上で自社基準で判断
12:59 12:自社開発からサードパーティーアプリ購入へ
14:01 13:成果報酬課金に対し、まだ不信感
14:58 14:生成AI最初のキラー用途はコーディングエージェント
15:36 15:C向けB向けもアーリーアダプターの口コミで牽引
15:56 16:最新技術をベースにした企業が老舗企業を追い抜く

※サムネイル画像はGreg ReeseによるPixabay画像を活用

登壇者情報

遠藤 太一郎

株式会社カナメプロジェクト CEO
国立大学法人東京学芸大学 教育AI研究プログラム 教授

AI歴25年。18歳からAIプログラミングを始め、米国ミネソタ大学大学院在学中に起業し、AIを用いたサービス提供を開始。AIに関する実装、論文調査、システム設計、ビジネスコンサル、教育等幅広く手がけた後、AIスタートアップのエクサウィザーズに参画し、技術専門役員としてAI部門を統括。上場後、独立し、現在は株式会社カナメプロジェクトCEOとして様々なAI/DAO/データ活用/DX関連のプロジェクトを支援する。国際コーチング連盟ACC/DAO総研 Founder等

https://kaname-prj.co.jp/

湯川 鶴章

株式会社エクサウィザーズ AI新聞 編集長

米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

https://community.exawizards.com/aishinbun

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

人ひとりが自分な好きなこと、得意なことを仕事にして、豊かに生きる。 そんな社会に向けて、次なる「The WAVE」を共に探り、学び、創るメディアブランドです。

目次