現地に根を張ってオポチュニティを捉える!ナイジェリア在住・日本人VCのアフリカとの向き合い方を探る

 2歩先の未来を共に探り、学び、創る「The WAVE」として、(主に編集長である私が)今最も「熱い」と感じているのがアフリカ市場だ。先日当メディアでレポート配信した「IVS2023 KYOTO / IVS Crypto 2023 KYOTO」のアフリカセッション記事では、「いま、アフリカのWeb3が熱い」とのタイトルで記事を配信したが、同エリアではWeb3に留まらず様々な領域でリープフロッグ型発展が進んでおり、ある者にとっては“地上における最大のフロンティア”として、またある者にとっては“高度経済成長真っ只中の当事者”として、その大きな波を探り、学び、創っている状況だ。

 そんなアフリカの中でも、特に経済成長が著しい国の一つ・ナイジェリアを拠点に長年活動しているのが、Kepple Africa VenturesでGeneral Partnerを務める品田 諭志氏である。実は同氏は、先述のセッションにおいてモデレーターを務めた人物でもある。

 現地に根を張って活動するVC(ベンチャーキャピタル)メンバーとして、具体的にどんな取り組みを行い、また中長期的にどのような未来を志向しているのか。じっくりとお話を伺った。

品田 諭志氏(Kepple Africa Ventures General Partner)
目次

かなり多様なメンバーが集まるKepple Africa Ventures

--まずはKepple Africa Venturesについて教えてください。

品田:2018年10月設立された、ケニアとナイジェリアに根を張ってスタートアップ投資をおこなうベンチャーキャピタルです。「アフリカに新しい産業を創る」をミッションに、現地スタートアップの成長支援や、日本企業と協業する仕組みを作り出しています。

母体は、日本で投資家とスタートアップを繋ぐプラットフォーム(KEPPLE CRM)や各種投資家支援サービス等を提供している株式会社ケップルです。グループ全体で「Create New Industries 世界に新たな産業を」をミッションに掲げており、「世界全体を見たときに今後最も新しい産業を作っていくのにふさわしい場所がアフリカだよね」というところから、Kepple Africa Venturesはスタートしました。日本企業との連携はもちろん、ナイジェリアのPEファンドやセネガルのベンチャービルダーなど、かなり多様なパートナーを巻き込んで活動しています。

最初のファンドが2018年に立ち上げた約20億円のファンドで、これが2021年ぐらいまでにほぼ投資活動を完了しており、現在は第2号ファンド、サイズ的にはおよそ60億円を超えるぐらいのものを運営中です。

--どのようなメンバーがいらっしゃるのでしょうか?

品田:Kepple Africa Venturesの創業メンバーとしては、日本に神先孝裕、ケニアに山脇遼介、ナイジェリアに私という体制で活動しています。

ただし、アフリカにおけるVC事業はすでに脱日本化しており、山脇と品田以外の十数人は全員、ナイジェリア人、ケニア人、中国人など、多国籍メンバーで構成されています。

その中でも、現在第2号ファンドを一緒に運営しているOry Okollohというケニア人のパートナーは、ハーバード大学で法学博士まで修了し、ケニアに戻って起業した後は、Googleの法務のアフリカヘッドや、アメリカのベンチャーキャピタル「Omidyar Network」のアフリカ投資担当、サファリコム(Safaricom)やデロイト アフリカの社外取締役など、かなりシニアなポジションで色んなことを経験してきている人物です。

品田氏はKepple Africa VenturesのGeneral Partnerの他に、Verod-Kepple Africa Partners(Kepple Africa Venturesと、ナイジェリアの大手プライベートエクイティ企業・Verod Capital Managementの合弁企業、ルクセンブルク登記)のPartnerも務めており、そこで山脇氏(写真左)およびOry Okolloh氏(写真中央)と共に、アフリカ全域でシリーズAのテックスタートアップに投資を行う「Verod-Kepple Africa Ventures投資事業組合」(VKAVファンド)を運営している。2023年3月には、計60億円(43百万米ドル)の調達を発表した

品田:また、Olivia Gaoという中国人の同僚も、アメリカの大学院を卒業した後は中国系携帯電話メーカーのアフリカ向けCVCに従事し、その後ルワンダでファイナンシャルアドバイザリーの会社で2〜3年働いた後に、我々のところにジョインしてくれています。

このように、チームとしては日本人である必要が全くないので、国籍を問わず様々なバックグラウンドを持つメンバーが活躍してくれています。

頭脳流出とは真逆の「頭脳回帰」という現象が起き始めた

--品田さんがアフリカを舞台に活動されるようになったきっかけを教えてください。

品田:もともと小学校の時に親の仕事の都合で6回引っ越ししていまして、その頃の経験がかなり影響して、「環境の変化」を求める気質になったのだと思います。中高を通してアフリカの探検家や言語学者、人類学者の本を読むのが好きで、大学に入ったらとにかくアフリカに行こうと決めていました。そんな中、祖母が非常に寛容で、東大に入ったら100万円をくれるという約束をしてくれていまして、無事に合格したので、その翌日には教務課に行って休学届を出し、そのままアフリカへと飛び立ちました。きっかけとしてはそんな流れです。

--100万円を約束してくれるおばあ様もすごいですし、ちゃんと合格して入学ゼロ日で休学する品田さんもすごいですね…。アフリカのどの国に行かれたのですか?

品田:合計で40ヵ国ほど行きましたね。その中でも一番好きだったのが、ナイジェリアとコンゴ民主共和国(DRC:Democratic Republic of the Congo)です。どちらも、とにかく人がすさまじく個性的なんですよ。生活環境がかなり大変な国で、自己主張をしないと競争に押しつぶされちゃうような環境なので、体もデカいし、声もデカいし、態度もデカい。こういう国で生きている人たちの持っているエネルギーって結構すさまじいので、改めて自分がやりたいことや、“生きていく”ということはどういうことなのかをじっくりと考える機会になりました。

日本人から見るとアフリカ人ってみんな同じ人たちに見えてしまうかもしれませんが、国によって言語も価値観もバックグラウンドも違います。そんな多様な人たちがお金を稼ぐために行き来しているわけです。お金を稼ぐというのが一種の「共通言語」なので、自分もお金を稼がないと共通の土俵に乗っかれないなと思いました。そんな背景から、商社に入ることにしました。

--商社ではどんなことをされていたのですか?

品田:インフラやエネルギー関係のプロジェクトへの投資担当として従事していました。ナイジェリアは石油資源が豊富な国なので、石油会社・銀行・政府の3者が圧倒的に強く、これら既得権益層が政治/経済/ビジネス共に牛耳っています。自分もこれら既得権益層の人たちと仕事をしていまして、それこそ、ローカルパートナーのプライベートジェットに乗せてもらってお隣の国の大臣の家に乗りつけるなど、かなりトップダウンな仕事の仕方をしていました。

言ってしまうと、アジア・中東・ヨーロッパ等で既に確立されたビジネスモデルを

かなり焼き増ししながらアフリカ向けに展開していくっていうところが強いので、自分じゃなくてもやれる仕事だなという感覚を強く持つようになっていました。

大体2014〜2015年あたりの話なのですが、ちょうどその頃にアフリカにも起業ブームが興ってきました。

--というと?

品田:それまで既得権益側にいたお父さん/お母さんが、自分たちの子どもを海外へと送り、アメリカ等の大学院でMBAを取得させるような「頭脳流出」が起こっていました。子ども達は当初、GoogleやAmazonといったビッグテック会社で年収2,000万とかをもらって活躍していたわけですが、いつの間にかシリコンバレーの起業という新しいブームに染まり、祖国に帰ってきて新しいビジネスを立ち上げるということを始めたわけです。つまり、頭脳流出とは真逆の「頭脳回帰」という現象が起き始めたのです。

今までお父さん/お母さんが築き上げてきた既得権益のスキームをディスラプトするようなプロセスが、子ども達からボトムアップで立ち上がっている。そんな風景を目の当たりにして、自分もそこへと飛び込んでいきたいと考え、ベンチャーキャピタルを志ざすべく、まずはアメリカへとMBAを取得しに行きました。

日本人VCとしての強みを発揮できるシーンとは

--いきなりナイジェリアでVCをスタートさせるのではなく、まずはMBAを取得しに行かれたのですね。なぜでしょうか?

品田:正直なところ、日本人の自分がナイジェリアでVCをするとなった時、現地の事情に詳しい以外は、これといった武器がないと感じていたんですよね。まずは私自身が、彼らと同じ環境に一回身を置いて、アフリカで起業をしているナイジェリア人/アフリカ人の起業家と同じ目線でマーケットオポチュニティを捉える必要があると痛感して、アメリカのMBAに行った次第です。

あともう一つ、自分のモノの見方が過度に「アフリカ化」してしまわないようにするという意味でも、アメリカへのMBA取得は重要な意味がありました。

--モノの見方が過度に「アフリカ化」してしまうとは、どういうことでしょうか?

品田:ナイジェリアって、電気・水が来ないとか、約束した通りに物事が動かないとか、とにかく目の前の問題が多すぎます。それらの課題対応に一生懸命になりすぎると、5年先・10年先・20年先のダイナミクスみたいなものを見失ってしまう可能性があります。目の前のことだけを追うのではなく、現場から一回離れて世界で起きているトレンドとかも見ながら改めてアフリカのオポチュニティを捉え直すっていうところがすごく大事だと考えたことも、MBA取得を挟んだ経緯になりますね。

--今のお話を伺っても、ナイジェリアってめちゃくちゃローカル色が強いビジネス環境だと感じるのですが、そんな中で日本人としての強みはどのように発揮できるものでしょうか?

品田:まず非常にラッキーなこととして、日本人は宗主国ではないこともあって、“無色透明”で非常にいいイメージを持たれていることから、現地の人々にアプローチしやすいところがあります。あと私自身、それまで4年半商社の人間としてナイジェリアに住んで仕事をしていたので、現地のマーケットやオペレーションに対する理解が深いところもあります。特にオペレーションを知っていることは重要で、ここに対する理解がないと、スタートアップの事業を成長させるのは相当難しいと感じています。

--ここでいうオペレーションとは、具体的にはどういうことでしょうか?

品田:例えば携帯電話のアプリによるサービス事業を考えた場合、日本の場合はみんな一意の携帯電話番号を持っていることが前提になるでしょうから、それを踏まえてマーケティングを実施すればいいと思います。

一方でナイジェリアでは、携帯電話のSIMカードを一人複数個持っていることがザラなので、仮に080番号でアカウント登録しても、明日になったら090番号を使っているかもしれません。もしくは無料Wi-Fiが使えているときは、WhatsAppとかを使うなどして、いきなりSMSを使わなくなる可能性もあります。このように利用環境の前提がコロコロと変わっちゃうので、本人確認の難度も高いですし、顧客に対するオンボーディングのハードルも高くなります。

これはほんの一例で、他にも例えば現地メンバーのマネジメントや規制当局への対応など、現地特有の注意点が何個もあります。これらを総称して、ここではオペレーションと表現しました。

--なるほど。

品田:あと、ローカルなVCはファンドサイズが小さいので、投資先をレイターステージへとつなげていくためには積極的に追加の資金を提供する必要があります。その時に私たちは、日本のファンドとしてサイズ感が大きいことに加え、日本企業からの出資の橋渡しもできます。過去3年間で日本企業15社が、我々の投資先であるアフリカのスタートアップに初めて投資をスタートさせており、日本企業が出資をしてくれるというのはアフリカのスタートアップにとってめちゃくちゃ大事なことです。スタートアップのパートナーとして、強いブランドやグローバルなネットワーク、オペレーションのノウハウとかを提供してくれるような投資家が圧倒的に足りていませんからね。

そう考えると私たちは現地のVCと全く競合していないわけです。結果として投資先のスタートアップが伸びていくし、次のラウンドにも進める。お金を持ってくるというところだけではなく、日本企業を巻き込むことによって、現地から高く評価されるようになる。そこが日本人としての大きな強みの部分かなと思います。

当然ながら、アフリカの中でも国によって状況は全く異なる

Kepple Africa Venturesでは本記事執筆時点で11ヵ国113社に対して出資等をしている(画像:Kepple Africa Venturesホームページより)


--「アフリカ」と一言で表現しても、様々な国がありますよね。ビジネス環境としての違いはいかがですか??

品田:かなり違いますね。例えばケニアとナイジェリアを見比べてみましょうか。日本人や欧米人にとって最もなじみが深いアフリカの国の一つがケニアだと思いますが、この国のスタートアップに関しては、半分近くが外国人ファウンダーという印象です。一方でナイジェリアは99%が現地ナイジェリア人のファウンダーです。

--なぜそのような違いが発生するのでしょう?

品田:ケニアには元々、多国籍企業や国連、NGO等で働くという形で優秀な外国人が来ていました。そこに「スタートアップを立ち上げる」という選択肢が加わったことで、自然と外国人ファウンダーが続々と誕生していったわけです。起業のアイデアとかも世界のマーケットと連動しやすく、ディープテックやハードウェアなどの中長期で取り組む必要がある会社などはケニアの方で生まれやすいという傾向があります。

一方でナイジェリアは、とにかく目の前の「生きていくための問題」があまりに多く、先述のオペレーションを理解している現地のファウンダーでないとそれらを解決に導けません。元々オイル&ガスの分野以外では外国人がほとんど入ってこない国だったこともあり、外国人がいきなりナイジェリアに来て起業するというのは相当難しいと言えるでしょう。

--なるほど。「アフリカ」という形でひとまとめにして市場/事業環境を捉えようとすること自体、ナンセンスだということがよく分かりました。

品田:そんな中、実は一つ後悔していることがあります。

--何ですか?

品田:先ほどお伝えしたとおり、私はナイジェリアで2019年から投資活動をしているわけですが、あと2、3年早かったら、もっと面白かったなっていうところがあります。私がアメリカに在学中でナイジェリアに通っていた頃に、今ユニコーンになっているような会社の創業者たちが、まだシードとかシリーズAを開始する手前ぐらいで切磋琢磨していました。その時に知っていた人たちは今のナイジェリアにおいては、みんなが憧れるロックスターのような大先輩起業家になっているわけです。

そのような反省を踏まえて、今私がアフリカの中で最も注目している国の一つが「コンゴ民主共和国」(以下、DRC)です。

コンゴ民主共和国でベンチャービルディングを始める理由

--なぜDRCに注目されているのでしょうか?もともと学生時代に品田さんが行っていたことと関係しているのでしょうか?

品田:それもありますが、一番は、「今のDRCは、2016・2017年頃のナイジェリアの状況に似ているから」ということが大きいですね。

とにかく人口が伸びる国というのは、どんどん都市化が進んでいくし、人が増えれば増えるほど色んな軋轢が増えて問題も大きくなっていきます。ナイジェリアもDRCも、とにかくアフリカの中では最も汚職がひどい国の一つで、貧富の差が激しくて、かつ資源国です。よって、社会が大きく変わるときの“変化のスピード”も、ものすごく大きい場所だと思っています。

--一昔前の中国やインドの状況に少し似ていますね。

品田:まさに、30年前にインド・中国をオポチュニティと捉えていた人は少なくて、むしろ問題の塊として捉えていた人の方が多いのではないでしょうか。人口が増えていく国って、どこかで「問題の塊」が「オポチュニティの塊」に変わってくる瞬間みたいなものがあると思っていて、ナイジェリアはその瞬間が、おそらくは3、4年前には結構起き始めていたと感じます。今それがある程度形になりつつある場所だとすると、DRCは今これから起きる場所というところなんです。ナイジェリアですでに起きたことをベースに、ある意味「カンニング」しながら投資活動していけるっていうところがあるので、まずはナイジェリアの成長に欠かせない要素となった「決済」「サプライチェーン」「ロジスティックス」に注目しながら、単なる投資ではなく、スタートアップを一緒に作り上げていく「ベンチャービルディング」を開始しようとしています。

--ベンチャービルディングということで、具体的にどんなことをされようとしていますか?

品田:DRC現地で一番大きいテックハブを作っている大手企業、およびセネガルでベンチャービルディング事業をやっている企業と組みながら、ジョイントベンチャーを立ち上げようとしています。

DRCのスタートアップにとって何が足りないかというと、資金はもちろん、様々なノウハウが不足しています。例えばアフリカでフィンテックが伸びた国を考えてみると、ケニアやナイジェリア、エジプトなど、英語が広く使われているマーケットであると言えます。一方でDRCはフランス語圏なので、言語の壁があり、他の既に成熟したマーケットでどんな成功事例/失敗事例があったかをなかなかキャッチアップできないという問題があります。

--知っていれば回避できるであろう失敗を繰り返してしまうリスクがあると。

品田:他にも、ローカルな投資家がめちゃくちゃな条件で投資をする、という問題も挙げられます。例えばナイジェリアでもあったことですが、1,000万円投資して会社の株の40%を取っちゃうみたいな、めちゃくちゃな投資条件が横行しているわけです。これもやっぱり、世界とつながっていないからこそ起きちゃう問題だと言えます。あとは、すごくいいアイデアを持っているファウンダーがぼちぼちと出始めてはいるものの、まだ圧倒的に市場にタレントやテック人材が足りないので、アイデアを実際に具現化していくための「最初の一歩」がなかなか進まないのも問題です。

こういう状況下だからこそ、ファウンダーに対して単にお金を供給するのではなく、一緒に事業を作れるようにチーム作りを手伝ってあげるとか、アドミ(サポート業務全般)やテックの部分をなるべく共通化して支援先数社に対してサポートを共有できるようにする、などの仕組み作りを想定しています。

フランス語圏やアラビア語圏のマーケットは、オポチュニティが大きいにもかかわらず、まだ世界から分断されているという不思議な状況があります。ここで情報格差を埋めてあげながら、リソースの足りない部分を効率的に供給して一緒に事業を作っていく。そうすることで、成長に対してかなりショートカットさせてあげることができると思っています。

“点”ではなく“面”。産業の「塊」を創っていきたい

--品田さんは本当にアフリカを愛しているんだなということを、話をしていてすごく感じます。どういうところにその源泉があるのでしょうか?

品田:事業を一緒にやればやるほど、自分の周りにコミュニティが出来上がっていくことが、大きな醍醐味だなと感じています。既得権益が強く新しい仕組みが生まれにくい環境下では「この人の言うことを聞かないと話が進まない」みたいなことが日常茶飯事なのですが、今のナイジェリアやDRCは、自分たちがゼロから事業や人間関係を作っていける段階です。ですから、新しい仕組みを作っているんだなという実感につながるところが、個人的にはすごい嬉しいところだと感じています。

それに付随して、優秀な人が活躍しやすくなっているのも興奮します。普通に考えたらナイジェリアって人口が2億人近くいて、いくらでも天才がいるはずなのですが、今までは既得権益であったり家柄であったり、社会のヒエラルキーであったりという中でなかなか活躍できていなかったと思います。

--だからこそ、先ほどおっしゃっていたような頭脳流出が起きていたわけですね。

品田:そうです。それが、テクノロジーを使って起業するというオポチュニティが出てきたことによって、その人たちがより活躍しやすくなってきたと感じます。そういった優秀な人たちとつながりながら、個人の信頼関係をベースに10年後のスタンダードを作っていく。そんなプロセスを体験できるのって、やっぱり最高に面白いですよ。

色々とお伝えしましたが、学生の頃から自分が一番惹かれていたナイジェリアとDRCの特徴を端的にお伝えすると、とにかく「カオス」だということです。カオスがようやくオポチュニティになっているからこそ、投資家である自分たちとしては、5年後、10年後にこの国のデフォルトになっていくかもしれないものを作っていきたいと考えています。観察者としての面白さっていうよりも、作り手としての面白さっていうところを共有させてもらっているなと思っています。

--ありがとうございます。それでは最後に、品田さんの中長期的な目標を教えてください。

品田:私たちKepple Africa Venturesは「世界に新たな産業を創る」という目標を掲げている中で、スタートアップにただ投資するというところを超えて、「塊」を作っていきたいと思っています。

--塊、ですか。

品田:フィンテック1社が大成功しましたとかじゃなくて、自分たちの投資先が集まって、例えば農産物を生産し、物流を通じてレストランや消費者のところに届き、そこで決済が使われる。さらに肥料とか種子とか含めた供給の部分もできる。そんな農業のバリューチェーン全体を押さえるような形で、産業が大きく発展していくプロセスを「塊」として作っていきたいと思っています。

これをやっていくためには、単にスタートアップへの投資を「点」でやるのではなく、「面」を創る視点が大切だと考えています。自分たちの投資先をどんどんとつなげていきながら、塊にしていく。これをナイジェリアやケニアなど、それぞれの国でやるというよりかは、ここで活かした教訓を他の新しいマーケットへと拡げていき、中長期的にアフリカ全体での産業作りを担っていく。これをしっかりとやっていくことを、当面の自分たちの目標にしています。

もちろん、このような動き方をしようと思ったら、自分たちだけでは絶対にやりきれません。だからこそ、先ほどのDRCでの取り組みのように、積極的にジョイントベンチャー等を作りながら、色んなパートナーと色んなマーケットで「塊」を作っていきたいと考えています。

取材/文:長岡武司

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この記事を書いた人

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