【動画字幕版】なぜOpenAIは巨額の赤字垂れ流しでChatGPTを公開するのか?web3・DAOとの組み合わせによるインパクトを解説

 2022年11月にOpenAIからチャット型AIツール「ChatGPT」が発表されて以来、その革新性が世界中で大きな話題となっている。まるで人間とのやりとりの要領で対話ができるのに留まらず、文章の添削や要約、プログラミングにおける間違いの修正、そして旅行計画の立案まで、様々な用途での活用ケースの情報がSNSを中心に飛び交っている状況だ。

「Googleの時代は終わった」

 検索エンジンを代替するビジネスの登場を予感させることから、このような論調が大手メディア媒体を中心に展開されているわけだが、果たして本当にGoogleはこのままダメになってしまうのだろうか。そもそも、巨大AIモデルの時代において、これまでと同様にテック大手が富を拡張させ続けるのか、それともDAOを中心とするweb3が新たなAIパラダイムを開拓していくのか。そして、ChatGPTの真のイノベーション はどこにあるのか。

 今回は、このChatGPTが示すAIの新パラダイムについて、DAO総研 Co-Founderの湯川 鶴章氏が解説した。

※本記事では、動画解説の字幕部分を展開しています。
記事末に短編動画もあるので、短時間でポイントを押さえたい方は短編をご覧ください。

目次

本編:なぜOpenAIは巨額の赤字垂れ流しでChatGPTを公開するのか?web3・DAOとの組み合わせによるインパクトを解説

ChatGPTがパラダイムシフトだということに気づいている人はまだ少ない
無数につなげちゃえばめちゃめちゃすごいことになるっていうのは
やってみないとわからなかった
「web3頑張ろう!」という動きがさらに強まってくる

ChatGPTということで今すごく話題になっているが

これは新しいインターネットのパラダイムだと思う

これをきっかけにして、これからどんどんどんどん

新しいAIのパラダイムが開くということ

これは僕が勝手に言っているわけじゃなくて

OpenAIというChatGPTを作った会社のCEOのサム・アルトマンさんが

「モバイル以来のプラットフォームのパラダイム」だと言っている

iPhoneとかが出た時にモバイルアプリが山のように出てきて新しいビジネスがバッと一気に花開いたが

それと同じことがこれから起こると言っている

実はスタンフォード大学も早くから同じようなことを言っている

新しいAIのパラダイムシフトが起こっているんだと、2021年の論文を発表している

じゃあどんなパラダイムかというと

「基盤モデル」という新しいAIのパラダイム

LaMDAを見たら、やっぱりGoogleはすごいことが分かる

基盤モデルという巨大なモデルがあって

その上に無数の特化型のモデルが出てくるというのがこれからのパラダイムだと

「Googleがダメになる」などといった意見が多い

例えばニューヨーク・タイムズでは「Googleに激震」ということで

社内に非常事態宣言が出てGoogleが後手に回ったというような話を書いている

こういう風な論調が結構多い

たしかに非常事態宣言は出たらしいが、でもGoogleってやっぱりすごい

ChatGPTはGPT-3(正確に言うとGPT-3.5)という巨大な基盤モデルがあって

それを対話型・チャット型に特化させたというもの

その元になる技術は「Transformer」という技術

そのTransformerという技術を作ったのは実はGoogleだし

当然Googleも巨大言語モデルは作っている

その巨大言語モデルは「LaMDA(ラムダ)」と言われている

2022年にLaMDAを検証しているGoogleの技術者が

「このAIに意識が宿った」と言って大騒ぎしたことがある

「これは大変なことなので開発も中止した方がいいんじゃないか」と経営陣に言ったそうだが

経営陣は「いや意識が宿ったのとは違うだろう」みたいなことで相手にしなかった

それでこの技術者が怒ってメディアにリークして、それで世界中にこのニュースが流れて

Googleは意識を持つAIを開発してるんだということで大きな話題になった

本当に意識が宿るか宿らないかについては、僕はこの段階では宿らないと思う

何十年後かに宿るようなものが出るのかもしれないが

この段階で宿るということは絶対ないと思っている

でも意識が宿る/宿らないに関わらず

そういうことを熟知している技術者が「意識が宿った」と思うほど

GoogleのLaMDAという言語モデルは優れているということ

そこが一番のポイントで、実際にChatGPTの基盤モデルであるGPT-3との会話経験がある別の技術者に言わせると

「LaMDAの方が全然すごい」「明らかに違うレベルだ」と言っているので

Googleのこの言語モデルはすごいということ

2022年秋から限定公開されている特化型AIモデル

Googleの言語モデルがいつ世の中に出てくるのかと言うと

年内には出てくると思う

2022年の秋ぐらいから一部限定で公開している

ChatGPTのように無料で誰でも使えるようにはしていないが

目的に特化したような小さなモデルがいっぱい出ている

一部申し込めば使えるという形になっていて、3種類のモデルが出てきている

「imagine it」は小説・アニメ・漫画等を書くときにストーリーを入力したら

「このストーリーだったらこういうふうな状況がいいんじゃないか」ということをサジェスチョンしてくれるようなAI

「talk about it」というのは、ChatGPTみたいな感じでいろんなことについてお話しできるというAI

「list it」は何か大きな目標に向かって人間が進もうとするときに、そのコーチのような役割をしてくれるようなAI

Googleも焦っているから、年内にこれらのツールが出てくるんだと思う

なぜOpenAIは巨額の赤字を垂れ流してまでChatGPTを公開するのか

なぜGoogleが後手に回ったように言われているのか

優れた言語AIを独自に開発しているのに

なぜGoogleはChatGPTのようなチャットAIモデルをリリースしていないのか

処理コストがめちゃめちゃ高い

チャット型AIというのは1回の応答に約2セントの処理コストがかかると言われている

検索エンジンの処理コストの約7倍と言われている

検索エンジンの方は既に広告モデルがついているのでお金になるので

どんどん利用してもらったらいいということだが

チャット型モデルはどんな風に広告をつければいいのかがまだ明確でないので

今公開すると赤字垂れ流しになる

実際ChatGPTの1日の運用コストは約10万ドルと推計されているから

1日1,000万円ぐらいがどんどんと出ていく

じゃあ、なぜOpenAIという会社は巨額の赤字を垂れ流してまでChatGPTを公開しているのか

それは今、資金調達を目的に評価額を釣り上げようとしているから

評価額は去年(2022年)の倍ぐらいだと言われている

無料で一般公開して世間の評価を味方につければ評価額を釣り上げられるんじゃないかと

僕はずっと、資金調達に成功すれば無料公開を中止するだろうと思っていた

実際にマイクロソフトがOpenAIに数十億ドルの追加出資を決定したというニュースが流れたし

ChatGPTの有料版を作るという計画も発表されていた

無料版は少しずつアクセスができなくなっていくんだろうなということで

有料版に切り替わるんだと思う

だからGoogleはまだやっていないということ

要するに本の「斜め読み」のような技術

基盤型モデルはこれからいっぱい出てくるわけだが

その元になる技術はTransformerという技術

Transformerは「並列処理」ができるという技術

今までの言語AIは「逐一処理」という、文章頭から順番に理解していくもの

Transformerは「ページ1枚をそのまま理解できる」とか「本一冊をそのまま理解できる」ということ

並列処理ができるというのはすごいことだが、どういうことかと言うと

速読できる人って本を斜め読みすると言われている

順番に文章を目で追っていくんじゃなくて、斜めに読んでいくと言われている

要するにTransformerは斜め読みのようなことをしているんだと思う

斜め読みをする人は大事な部分にだけ注目する

例えばこの「いつもお世話になっております。それではその条件で注文します。よろしくお願いします」というメール

この中だったら一番注目すべきところは「注文します」という部分だけだと

「よろしくお願いします」とか別にしっかりと意味を考えなくていいので

「注文します」というところだけに注目すればいい

このような「Attention機構」という技術がTransformerの中に入っている

文章の中でどこが重要かということを見つけてくる技術

あと、斜め読みする人は同時にいくつもの単語・文章を見ている

文章を順番に読む人は一箇所にだけ意識が向いているが

文章を斜め読みする人は意識が同時に複数の箇所に向く

これがAIではMulti Head Attentionという機能で、いくつもの場所に注目できるという機能

でもそれだと単語の順番がバラバラなっちゃうので

順番も理解しないといけないということでPositional Encodingという機能もついている

このように斜め読みみたいな形で文章を早く読めるというのがTransformerのすごいところ

早く読めるというだけだったら、それほど大した技術じゃないと思うかもしれない

実際にTransformerが出た時は開発したチームでさえも

これがそこまですごい技術だと思っていなかった

OpenAIのサム・アルトマンも、Transformerが出てきた時はここまですごい技術だと思わなかったと言っている

単なる速読ができるということだが

それを無数のコンピューターにつなげてしまえばめちゃめちゃすごいことになるっていうのは

やっぱりやってみないとわからなかった

実際につなげるといっぱいいろんなことができるようになってきた

結局はGAFAMが儲かり続けるという世界線のままなのか

スタンフォード大学は「これから基盤モデルの時代になってくる」と言っている

基盤モデルの時代になると大きなモデルが複数個出てきて

その上に、それを少し微調整したような目的特化型のモデルが山のように出てくる

スタンフォード大学も言っているしOpenAIのCEOも言っているわけだが

そうなるとどこが儲かるかというとやはりこの基盤モデルを作ったところが儲かる

テクノロジー大手がめちゃめちゃ儲かっちゃうんじゃないかという話

GAFAMのようなところが大きくなりすぎたことに対する反発としてweb3が起こっている

GAFAMというAIを使う会社がもっともっと大きくなってもっと力を持つようになるわけなので

反発は今まで以上にあると思う

もう一つ、GAFAMにとっての問題点が

今はネット上にある文書や写真等をもとに学習しているわけだが

もっとこれからいろんなデータが必要になってくる

テクノロジー大手に対する反発がどんどんと高まってきているので

データを使うことに対して一般の人たちが怒り始めてきている

じゃあ一般の人たちからどういうふうに気持ちよくデータを出してもらえるかというと

DAOのようなものを使って

データを提供するとトークンがもらえるようなインセンティブを与えるということと

あとはAI自体をDAOのようにみんなで運営するということが

求められるようになってくるんじゃないのかなと思う

AIそのものをDAOで作るという動き

一つの動きはテック大手が今まで通りAIを所有するんだけれども、その際にデータが必要になる

そのデータを一般の人からもらうということで、一般の人たちが生活協同組合のようなDAOを作る

“データ管理協同組合”のようなDAOを作って

「こういうふうな使われ方だったらデータを提供します」とか「このAIの会社にはデータ提供します」ということを

DAOでみんなで決定していくという流れになると言われている

そういうことを提唱しているDAOは前からあって、例えばOcean Protocolなどが進めている

そういうところに対してもっと支援の声が集まってくるんじゃないのかなと思う

もう一つの動きは、AI自体をDAOで作ってしまうというもの

テクノロジー大手に任せるのではなく

一般の技術者たちが集まって

「みんなのAIを作っていく」「AIを民主化していく」という動きがフランスで興っている

「BLOOM」というAIがもう誕生している

そういうのがweb3やDAOという考え方と結びついていくと思う

このままだとAIを持っている会社がより金持ちになっていく

それを止める方法としては

国家とか政府が止めに入るのか

それか民衆の間から止めようとするのであればweb3の考え方を進めていくということしかないと思う

ChatGPTがパラダイムシフトだと気づいている人はまだ少ない

ChatGPTがパラダイムシフトだということに気づいている人はまだ少ない

これからGoogleが同じようなものを出してくるので

「新しいパラダイムになったな」ということにみんな気づき始める

それ以降に「このままだとやっぱり大手に余計に力が集まる」ということで

「web3頑張ろう!」という動きがさらに強まってくるのかなと思う

今年から来年にかけて、ChatGPTをきっかけにして

web3やDAOの流れが余計に強まるんじゃないのかなと思う

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この記事を書いた人

人ひとりが自分な好きなこと、得意なことを仕事にして、豊かに生きる。 そんな社会に向けて、次なる「The WAVE」を共に探り、学び、創るメディアブランドです。

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