TradFi、DeFiの先の「NeuFi」を想定せよ。Web3×AIの社会変容インパクトを考える 〜NFTokyo2023 レポート#1

 2023年6月22日、国内最大級のNFTカンファレンス「Non Fungible Tokyo 2023」(以下、NFTokyo2023)が開催された。2018年の第1回目開催(当時の名称は「Tokyo Blockchain Game Conference」)から通算して6回目となった本カンファレンスでは、コロナ禍での催しとなった昨年と比較して、より多くの国内外メンバーが会場へと押し寄せていた。

カンファレンス冒頭で挨拶をする藤本真衣氏。Non Fungible Tokyo 2023の発起人の一人であり、同カンファレンスが主体となって発展してきたJBW(Japan Blockchain Week)の共同創業者でもある。ちなみに本年度はJBW全体で延べ700人以上のスピーカー(来日スピーカー200人以上)が参加し、スポンサー企業100社以上、コミュニティイベント100以上が、それぞれ期間内に参加予定となっている。名実ともに国内最大級のWeb3コミュニティになっていると言えるだろう
サイドステージ後方には様々なWeb3プロジェクトのブースが出展していた

 DAO総研ではWeb3動向のこれまでとこれからを探るべく、複数回に亘って当日のセッションの様子をレポートする。第一弾では「新たなるWeb3の実験と試みが、社会をどの様に変革するか?」と題されたセッションについて見ていく。決済、ゲーム、それからアセット・トークナイゼーションという、Web3ユースケースの最たる領域の実践者たちが、中長期的な社会像についてディスカッションした。

  • Tokio Nakamoto (Slash Fintech Limited)
  • Timothy Lee (EthSign)
  • Luke Barwikowski (Pixels.xyz)
  • Melody Taira (Meteorite Labs) ※モデレーター
目次

これがWeb3ゲームだということを知らずにプレイしている人もいる

 まずは自己紹介を兼ねて、各登壇者が取り組むプロジェクトの現場と挑戦について、それぞれ紹介がなされた。

 Luke Barwikowski氏率いる「Pixels.xyz」(以下、Pixels)は、グローバル最大規模を誇るWeb3ゲームプラットフォームだ。いわゆる一般的なブロックチェーンゲームと同様に、ゲームをプレイして報酬を得るというゲーム内経済に参加することもできるし、開発者向けのツールやサービスも提供していることから、ゲームを簡単に構築・プレイでき、そこから収益化することもできるようになっている。現在、100万ユーザーを超えているという。

 Pixelsを立ち上げたBarwikowski氏は、同プロジェクトでは特に「相互運用性(インターオペラビリティ)」に注力してきたという。

「他のエコシステムですでに所有しているアセットを私たちのエコシステムで使えるようにすること、そしてWeb3ライクな具体的なメリットを提供すること。そんなユーザーにとっての “オーナーシップ” のあり方を探究しながら、コミュニティと共にプラットフォームを育んできました」(Barwikowski氏)

Pixelsでは無料でゲームプレイすることができる。バックエンドではthirdwebのような開発フレームやCoinbase Pay等と連携しているものの、自前での開発・構築も進めているという

 NFTブームがピークを迎えた2021年夏より約2年が経過し、Pixelsのように成長が続いているGameFiもあればそうでないプロジェクトも多数存在する。Pixelsが現在に至るまで100万ユーザー以上に支持されている理由を問われたBarwikowski氏は、悩みながらも、以下のようにコメントする。

「今のWeb3プロダクトは、解決しなければならないUX課題がたくさんあって、構築の難度がとても高いと感じています。そんな中私たちは一貫して、いかにゲームの世界に簡単にWeb3の要素を注入するか、ということに心血を注いできました。だから、私たちのゲームに初めて参加したユーザーの中には、これがWeb3ゲームだということを知らずにプレイしている人もいます。全員がこのようになることが理想ですよね。そのためにも私たちの方では、カストディアル・ウォレット(第三者が秘密鍵の管理をするタイプのウォレット)を作成したり、多くのアセットを管理したり、サインアッププロセスを非常に簡単にしたりと、バックエンドで多くのことを行っています。Web 3が実際にどのような価値を提供するのかに焦点を当て、オンボーディング体験を本当に簡単なものにしています」(Barwikowski氏)

 Pixelsが主戦場とするゲームは非常に競争の激しい領域であり、今回のNFTokyo 2023でも、メインステージでスクウェア・エニックスやバンダイなど、錚々たるタイトルメーカーが登壇し、それぞれの戦略に沿ってBCG(ブロックチェーンゲーム)等の展開を試みている旨を紹介していた。そんな中、スタートアップの強みはどこなのかと問われたBarwikowski氏は、「色々なことをアジャイルに試せることだ」と説明する。

「良くも悪くも、Web3ゲームで『間違いなくうまくいっている』と言えるところは、まだないと言えます。だからこそ、この分野で成功を収めるにはまだまだ多くの実験が必要であり、私たちのような小規模でアジャイルなチームは大きなアドバンテージになると思っています。大きな資本を投下させて何分の1かの確率で成功するタイトルを作っていくようなAAAのスタジオのアプローチもあれば、我々のようにリリースと改善を繰り返すアプローチもある。私は、後者の方が成功に近づきやすいだろうと思っています」(Barwikowski氏)

本当の意味でのガスレス・ペイメントに向けて

 Tokio Nakamoto氏がCEOを務めるSlash Fintech Limitedでは、Slash Web3 Payment(以下、Slash)と呼ばれる、暗号資産の決済に特化したプロダクトを開発・提供している。ターゲットユーザーは、店舗やECを問わず、あらゆる販売にまつわる決済を必要とする事業者だ。

 たとえば実店舗で暗号資産決済を導入したいと考えた際に、Slashを利用することで、店舗は店頭で決済用QRコードを印刷し、レジ横に置くだけで良いのだ。いざ暗号資産での決済を希望する顧客が来たら、該当のQRコードを提示し、ユーザーにSlashアプリで読み込んでもらうことで、手数料無料で店舗用のウォレットへの即時着金がなされる仕様になっている。まさに、PayPay等の要領で暗号資産の決済ができるというわけだ。

 そんなSlashについて、Nakamoto氏は以下のようにプロダクトの開発思想を語る。

「私たちの製品の核心は、より簡単で透明性の高い価値の移転にあります。たとえば、私たちが日本円でコーヒー代を支払うとき、そこでは価値の移転がなされています。日本円を米ドルに交換するのも、ETHと引き換えにNFTを売るのも、同様に価値の移転です。このような価値の移転を、誰でもどこでもできるプロダクトを私たちは作っています」(Nakamoto氏)

 Slashでは支払いが実行されると、スマートコントラクトを介してトークン変換プロセスを自動化し、分散型流動性プールの価格を検出して最適なレートを自動的に見つけて処理を進めてくれる。ユーザー(店舗等)は任意の暗号資産で支払いを受けることができるので、たとえば受け取りをステーブルコインに設定することで、暗号資産特有のボラティリティ・リスクを軽減することができるというわけだ。

「私たちはノン・カストディアルであり、完全に分散型です。ですから、私たちは独自の流動性を持っていません。たとえSlashが倒産したとしても、私たちはユーザーの資産に一切手を出せないので、ユーザーのお金は守られます。これが、私たちが目指す真のWeb3決済の重要なポイントのひとつです。また、本当の意味でのガスレス・ペイメント(ガス代が不要な決済)を実現することも、重要な論点であり、日々研究してる部分と言えます」(Nakamoto氏)

すべての資産はトークン化することになる

 3人目の登壇者であるTimothy Lee氏は、VISAやAmerican Expressなど複数の決済事業者を経験し、またシリコンバレーで複数のスタートアップを創業しIPO等を経験してきた人物だ。

 そんなLee氏が現在COOを務めるEthSignが提供しているのは、分散型の電子署名プラットフォームだ。現在、電子署名の最大手はeSignature等を提供するドキュサイン(DocuSign)と言われているが、そのWeb3版を志向して立ち上がったプロダクトである。

 また2023年2月には、各Web3プロジェクトのトークン管理に特化したプラットフォーム「TokenTable」もβ版リリースをしており、たとえばスタートアップ企業がキャップテーブル(資本政策表)を管理し、投資家や従業員等のステークホルダーに適切にトークンを配布・管理できる仕組みを提供している。

https://www.tokentable.xyz/

 ここで重要なことは、いずれのプロダクトも「無料で利用できることだ」と、Lee氏は説明する。

「ウォレットを接続し、tokentable.xyzまたはethsign.xyzにアクセスするだけですぐに利用開始することができます。つまり、もうDocuSignやCarta(エクイティ管理プラットフォームの最大手の一つ)を使う必要はありません。無料で使えることの強みは、そのまま参入障壁の高さにも直結するのです。私たちはSequoia Capitalの3つのユニットからの出資を受けた唯一のスタートアップであり、たとえばTokenTableを使うことで、SAFE(Simple Agreement for Future Equity:将来株式取得略式契約スキーム)やSAFT(Simple Agreement for Future Token:将来トークン取得略式契約スキーム)を使った資金調達を行うことができます。且つすべてをチェーン上で行い、投資家としてもポートフォリオ・ビューを見ることができるというわけです」(Lee氏)

 2021年12月、Coinbase元CTO・Balaji Srinivasan氏はブログ記事 “The Mirrortable” にて、株式等のトークン化による流動性の向上を言及している。Lee氏はこのブログ記事を引き合いに出しながら、「すべての資産はトークン化することになる」と強調する。

「私たちは今後5年、いや20年先を見据えた資産トークン化のロードマップを構築している最中です。現在のEthSignはその最初のステップの道中で、まずはニッチな分野を見つけて目下必要としているユーザーに集中しています。その際たる例がSAFEやSAFTと言えるでしょう」(Lee氏)

金融デジタル化の第三の波「NeuFi」がもたらす価値とは

 最後のディスカッションテーマは「Web3×AI」の可能性について。多くのWeb3プロジェクトチームが体感している通り、ChatGPTを皮切りとするLLMトレンドの到来によって、Web3への注目度は激減している。そんな中、モデレーターのMelody Taira氏は「私の立場からすると、AIとWeb3は多くの点で相乗効果があると感じている」と所感を述べる。

 これについてLee氏は「AIとクリプトが一緒になることで、今後20年間で社会を変革するだろう」と説明する。

「金融の世界には現状大きく分けてTradFi(伝統的金融)とDeFi(分散型金融)があると思っていますが、そこにNeuFiという(ニューラルファイナンス)がくると考えています。ここでいうニューラルとは、ニューラルネットワークを模した技術を活用するAIを示しており、また同時に遺伝資産トークンのことも指しています」(Lee氏)

 NeuFiについては、Lee氏がMediumに詳しい記事をアップしている。そこの冒頭にある通り、「生成AIと遺伝資産トークンが融合することで、金融デジタル化の第三の波(NeuFi)が到来するだろう」と説明されている。

▶︎NeuFi: How AI + crypto will converge to disrupt finance

 遺伝資産とは、担保資産の対義語として作られた造語で、これまでの金融資産が不動産などを担保とすることでその金融価値を示してきたことに対し、遺伝資産は、不動産などの現実社会の担保がなくてもブロックチェーン上の記録を参照することでその金融価値を示すことができるというものだ。

 なぜ「遺伝」という言葉が使われているのか。同氏によると、遺伝資産と担保資産の違いが、血のつながった親子と養子縁組で親子になった親子の違いのようなものだかららしい。養子縁組の親子であることを証明するには、その関係を担保するような書類や証言が必要になる。血のつながった親子はDNA検査だけで十分で、それ以外の担保は不要。遺伝資産も同様に、ブロックチェーン上のデータだけで十分その価値を証明できるので、現実社会の不動産などの担保でその価値を示す必要がない。

 詳細は上の記事をご参照いただきたいのだが、同氏は金融のデジタル化を3つの時代に区分し(電子時代、インターネット時代、ニューラル時代)、今はその幕開けのタイミングだとしている。遺伝資産が従来の担保資産よりも優先されることによって、業界全体でトークン化の波が起こり、現実世界の情報が一気にブロックチェーン上に移行することになるという。それにより、AIは現実世界からの入力に基づいてアルゴリズムを即調整できるようになるという。EthSignのTokenTableはもちろん、EAS(Ethereum Attestation Service:イーサリアム)なども、このようにAIがAIを使って自動取引を行う時代を想定してビルディング・ブロックを構築しているのだろうと、Lee氏はブログで説明している。SlashのNakamoto氏も、Lee氏の説明に同意しつつ、先述の説明で表現した「価値の移転」に革命をもたらす最大の要因になるのがAIになるだろうと続けた。

 一方でゲームの世界はちょっと事情が異なるようだ。PixelsのBarwikowski氏は「AIはWeb3ゲームの多くを台無しにする可能性がある」としつつも、一方でポジティブな可能性にも言及し、セッションを締めた。

「AIはゲームプレイがかなり発達してきているので、ゲームのAI利用が前提になってくると、また設計の仕方が変わってくる気がしています。一方で、プリプロダクション領域など、開発シーンで威力を発揮するケースも増えてきていますし、私たち自身も開発のスピードアップのためにAIを活用しています。いずれにせよ、AIが今後UGCをどのように後押しして進化させていくのかは、私たちのような事業者にとっても非常に興味深いテーマですし、引き続き注視したいと考えています」(Barwikowski氏)

取材/文:長岡 武司

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この記事を書いた人

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