【動画字幕版】ウイスキー樽と不動産のNFT化プロジェクトから考える、web3時代の実物資産の活用方法

 ウイスキー樽のように、「時間が経つほどに価値が上がる」ものをNFT化することによる未来像とは。

 また、リアルな別荘のデジタルツイン版に自分の好きなNFTを飾り、世界に1つだけの別荘空間を構築できる不動産×NFTサービス「ANGO」(読み方:あんご)は、どんな社会課題を解決するのか。

 今回は、早い段階から実物資産 × NFTのプロジェクトを立ち上げてきた、株式会社UniCask 共同創業者でありANGO合同会社 代表取締役のクリス・ダイ氏にお話を伺いました。

※本記事では、動画解説の字幕部分を展開しています。
記事末に短編動画もあるので、短時間でポイントを押さえたい方は短編をご覧ください。

インタビュイー:[上段左]クリス・ダイ氏(株式会社UniCask 共同創業者 / ANGO合同会社 代表取締役)、インタビュアー:[上段右]遠藤 太一郎(DAO総研 Founder)、[下段]湯川 鶴章(DAO総研 Co-Founder​)
目次

前編:ウイスキー×NFTで「時間の価値」をトークン化する!?

「ウイスキー業界のロビンフット」
ガバナンストークンを使って無料のボトルに引き換えることができる
時間の価値をトークン化するという概念で
初めての新しいプロダクト

一般の方たちにも理解できるNFTという文脈で何かできないかということで

「実物資産×NFT」の方に走った

それがUniCask(読み方:ユニキャスク)のウイスキーだった

--それはいつ頃の話ですか?

それは2019年の終わり頃

--早いですね

まだ(NFTが)コンテンツの方でもブームになってないのに

リアルの方をやって

2020年まるごと1年間準備して2021年にリリースした

最初にリリースした時はコンテンツNFTがバブっていたので

そんなに注目されているかと言うと

「面白いね」とは言われていた

個人のロマンだったり

もともと実物がある市場の中での流動性を提供したりとか

そういうのが含まれても良いのではないかと思っていた

一般の人でも樽で購入できるというコンセプト

みなさんボトルでウイスキーを買う

ボトルで買うのがなぜ良いかというと、流動性があって便利だから

1本1本友達にあげられるし、メルカリで売ろうと思えば売れるし、飲もうと思えば飲める

でも実は、樽の方が保管的には一番メリットがある

樽で買って保管して持っている間に熟成させて

高い値段になった時に売るっていうのが本当は一番良い

瓶の中では熟成しないので

でも買わないのは、流動性がないから

それが一般の方たちでも樽で購入をして

かつ流動性がある形で所有できるのが私たちのコンセプト

なので自分たちを「ウイスキー業界のロビンフット」(Robinhood:米国発の証券取引アプリ)と呼んでいる

株よりももっといいのが時間の価値

株はずっと持っていても価値は増えないが

ウイスキーってずっと持つと価値が増える

瓶(びん)ではなく樽(たる)でも持つと増える

ある意味、「時間のファーミング(耕作)」をしている

時間の価値を、我々はNFTで収穫している

時間の価値をトークン化するという概念で初めての

新しいプロダクトなのかなと思う

時間の価値をトークン化するNFTとは?

--時間が経つと確実に価値が上がっていきますからね

価値は確実に上がる

値段はマーケットプライスという風になるんですが

5年物と10年物を比べると

同じ銘柄であれば10年物の方が価値が高いのは紛れもない

--そうですね。そういう商品というのは面白いですよね

面白い。世の中以外と少ない

金ですらそうならない

金はインフレで価値は上がるが、モノ自体は変わらないので

--たしかに、モノ自体が時間と共に上がっていくのはウイスキーやワインですもんね

深く考えると、これって物理の法則に反している

普通エントロピーって、いつも世界全体がバラける/悪くなる方に行く

それが(ウイスキーについては)期間中は良くなる

ウイスキーは80年〜100年くらいまではもつけど

それ以上はって言うと、ちょっと味的にどうなのかは微妙なところだが

--あんまり美味しくなくなるんですか?

アルコール度数が低くなる

40度以下になるとそもそもウイスキーではないという話になるし

ある程度いくと味的にはあんまりで

それよりかは「希少性ですよね」ということ

発売したNFTは1日以内で完売

2021年12月からスタートして、もう6樽ぐらいやっている

だいたい1日以内で全部完売している

今のNFTのコンテンツビジネスはショータームのビジネスをベースにしている

バズらせて一回当たって

そこで全部売ったらクリエイターの収益になる

問題はその後にレベニューってあるんだっけという話になる

個人のアーティストがやっている部分は少量的に引き続き創作をしていけばいいが

例えば一気に売って、次にまた出すといった大きなプロジェクトの場合

既存のコンテンツNFTとしては売れる自信がない

我々はそこは関係なくて、逆にウイスキーの値段も上がっている

ウクライナの戦争で穀物の価格が60%くらい上がっている

必然的にウイスキーの価格も高騰している

それ自体も上がっているので、結構注目されるようになっている

とはいえ、私たちはWeb3なので

ウイスキーがたくさん売れるか売れないかというのはもちろんあるが

それがどうこうではなく、KPIとしているのは

メンバー、コミュニティを増やすところに重点があると思っている

DAOコミュニティの中で新たなウイスキーブランドを作る

DAOを使う目的というのが

長期的なコミュニティをメインテイン(維持)する仕組みという位置づけにしている

そこで色んな施策もやっている

--例えばどんなことをされているんですか?

例えば、実は私たちのDAOでは調達をしていない

みんなよくDAOトークンを資金調達用に売っているが

ウイスキーNFTのホルダーにステーキングしてくれればDAOトークンを付与する

という形になっている

全部“タダ”であげている

うちとしてもDAOトークンの投資家はいなくて、基本的に売る圧力もない

じゃあDAOトークン何に使えるのか

DAOのコミュニティで

新たなウイスキーブランドを作るというDAOを作った

自分たちで樽を選んでボトリングをして

デパートやオンラインストアで販売して

そこの売上の利益をボトルという形でみなさんに分配する形

ガバナンストークンを使って、無料のボトルに引き換えることができる

なぜ無料ボトルが出てくるかというと

新たなウイスキーブランドを作ってみんなでマーケティングしているので

マーケティングコストが減る

その(減った分の)コストをコミュニティに還元しようよと

特にウイスキーはそのコストが結構大きい

テレビでよくコマーシャルをやっていることからも

ウイスキーの分野は広告宣伝費が大きいことがわかる

--そうですよね。よくテレビコマーシャルで見ますもんね

原価は安い

基本的にDAOで運用することで、マーケティン費用を節約できるようになる

物理的な世界でもDAOは価値があるという仮説への実証

スマートコントラクトに全部組み込まれてるデジタルの世界

という風にみなさんDAOを言っているが

我々は新たに「物理の世界」でもDAO的な組織は価値があるんじゃないか

ということを実証している

--ウイスキーが好きな人たちですね
その人たちが「良い製品をリーズナブルなコストでみんなに提供したい」というのが目的で
そのためにメンバーが協力しあうことで
マーケティングコストを下げる働きをするDAOということを目指しているということ?

そうです

そのブランドをDAOで所有することで、ブランドの価値も上がってくる

所有すると言ってもDAOで法人格がないので所有はできないが

2019年に「NFT」っていう商標をウイスキー部類で取った

この「NFT」をブランドにしたウイスキーを販売する予定

--それはもう今販売されているんですか?

今まさに作っていて、スコットランドでボトリングをしているところ

たぶん(2022年)1月に販売を始める

アーティストとコラボする理由

--樽だけではなくキャラクターも付けていましたよね?
そこら辺の意図がすごく気になりました

アーティストさんとコラボレーションをしたかった

私たちは、ウイスキーNFTをウイスキーだけの価値にはしたくなかった

ウイスキーでは希少なラベルだと高くなったりするが

デジタルの世界ではなおさら、デジタルコンテンツとのコラボを

最初からDNAの中に入れておかないとと思った

なおかつ、色んなアーティストさんがNFTを作って販売するのは結構大変

そうではなく、我々とコラボすることによって

色々な人にリーチができて、レベニューシェアもしている

アーティストさんのアートを使わせていただくので

ライセンスフィーをレベニューシェアしている

そうすると、アーティストさんもマネタイズができる

それで新たに作ってくれとかではなくて

今までの作品で少し変えて中に入れて、とかをやっている

裾野を広げていきたい、巻き込みっていうのは大事

自分たちだけで牛耳ってやろうという話ではなく

色々な人たちとコラボしてやるというのが大事なんじゃないか

動画字幕(後編)

デジタルで飾れる以外に
リアルの別荘のスクリーンに
NFTを飾れるようになる
「分散性は安定する」ってことを証明したい
“ピュア”ってブロックチェーンの世界はないですよね

今度、不動産の方で「ANGO」というサービスで

「安らかに居る」で「安居(あんご」)と読む

リアルな別荘をNFT化して、メタバースで作った

NFT所有者が、一人1つのメタバース別荘の中に、自分の絵とかNFTを飾れるようになる

今飾るところがない

自分で飾れるようになるというのが面白いところ

デジタルとリアルの両方で好きなNFTを飾れる別荘

デジタルで飾れる以外に

飾った物がリアルの別荘のスクリーンにも出て来る

アートフレームみたいに置いてあって、そこにも連動する

--メタバース上の別荘というのはデジタルツインですか?

デジタルツインみたいな形で作っている

NFTを持つ方はリアルの別荘に無料で泊まることもできる

--リアルの家が一軒あって
そこに自分のデジタルの家を持つことができて
そこは自由にデコレーションできる?

デコレーションすることができる

ーーデジタルの中で自分の別荘の中に好きな絵を貼っていくじゃないですか
リアルの別荘に泊まりに行った時に
デジタルの別荘で飾られてる絵と同じように飾られているのですか?

それもできるようになる

コミュニティで相談して確実にそうするのか、それとも要望なのか

機能の開発になってくる

技術的にはもちろんできる

ーーそれは面白いですよね。

自分持っているNFTが全部別荘で

普通自分の家ではそんなスクリーン持っていないから

それをディスプレイする管理システムも必要なので、全部準備する

ーー自分の好きなNFTの絵をいっぱい買ってて
それが別荘に行くとみんな飾られてたら
それは楽しいですよね

ーーそこで泊まった人が買いたいとか言ったらそこで売る?

そこでも売る

それがDAOの収益にもなるかなと思っている

まず(リアルな別荘を)自社で所有して

個人のNFT所有者が使えるようにする

同時にサステナブルにしなきゃいけないので

この別荘を180日を「民泊」として貸し出すことができる

そこでも収益を生ませる

収益の出てきた部分をメンテナンスやアップグレード等に使って

そのお金のガバナンスをDAOメンバーでやる

ガバナンスのDAOにもなっている

新たな社会価値を生むスキーム

ーー不動産というのは、NFTだとどんな点が良いのですか?

利用率を高められる

今までの別荘は一人で持っていると「何しに泊まりに行くの?」と言う話で

同じ空間や費用をかけているのに非常に利用効率が悪い

別荘は使っている程に良くなる

ずっと使われていない方が壊れやすい

地域経済も同じようなもので

持っているだけでは価値が生まれない

私たちは同じ別荘でできるだけ多くの人がそこに参加・利用して

Airbnbなんかでも利用して

365日ずっとフル稼働できたら、新たな社会価値を生めるものなんじゃないかと思っている

特に地方は過疎化が進んでいる中で

海外の人に紹介して来てもらうという、インバウンド誘致の手口としても使えるのではないか

ーーWeb3の世界ってかなりグローバルですもんね

そこを上手く使っている

個人のインフルエンス力で認知を広げる

--Airbnbも有効活用しようという仕組みですが
AirbnbよりもWeb3の方が優れているのはどういうところだと思いますか?

中央集権的なビジネスになると

管理者の体力だったり宣伝方法に寄る事になるが

Web3では個人のインフルエンスする力を上手く使うことで

コミュニティの力によって宣伝広告をして、色んな人が来るようになる

しかもその人たちは毎月、毎年確実に使う

それも確実だし、ロングタームにメインテイン(維持)ができるんだったら

そっちの方が安定する

「分散性は安定する」ということを証明したい

ーーWeb2は儲かり始めたら儲かるので
Airbnbも儲かり始めると儲かるとは思うのですが
それを全部経営者が取っていく仕組み

そう、経営者が取っていくのでやっぱり長続きしないというか

Web2の世界って、上がったら経営者が儲かって

Exit(エグジット)してはじめて少しずつ下がって

ユーザーはロイヤルティがない

自分がそこに関わることによって、そこのプロジェクトに対するロイヤルティが生まれて

そこを信じているみたいな感じ

ーーDAOに参加する人が増えてもらわないといけないということですが
そこはメンバーが口コミで広げていくんですか?

もちろんコラボレーションやAMA、一般的なSNSキャンペーンとかはやっていくが

最終的には個人と個人のつながりで参加してもらうのが

ロングターム的には一番良いと思っている

NFT所有者にガバナンストークンを付与

--今回のケースでは、ガバナンストークンとNFTは同じですか?

ガバナンストークンとNFTはまた別

NFTを所有することによって、ガバナンストークンを渡すという形になる

ガバナンストークンとは一括で全部あげるのではなく

持っている間に少しずつ渡すような形

ーー貢献したりとかすると貰える?

貢献しなくても、ゆっくり少しずつ毎月とか毎日少しずつ

ーーずっと保持しているとだんだん

だんだん増えていく

ーーずっと保持するということで
投機ではないという証ということですか

はい。この人はすぐに売買とかじゃない、など

ーーだから信頼できるので、ガバナンストークンをあげると

色々発表したり、人を紹介したり、活動するとガバナンストークンをあげるというのは、貢献をしているからという話

ーーNFTホルダーは何人くらいいますか?

100名くらい

一日泊まれる権利と想定した時に、だいたい100日間くらいを想定してるので

ブロックチェーンの世界に「ピュア」はない

--はじめは株式会社が運営していて
それをDAO化していくみたいな感じ?その辺りどうですか?

今は株式会社が運営していて

将来的に上手くDAOの枠組みが法律的にできあがると

そういうところにトランジション(移行)していきたいなと思っている

最初は会社で色んな運営をすることが必要になってくるのかなと思っている

ーーどこもそういう認識で定まってきていますよね
最初からDAOのにすると全然進まないので

全然進まないと思う

そこのラインも、ビジネスによってもたぶん違ってくる

リアルの方がもっと具体的な問題を解決しないといけないので

デジタルよりもなおさら会社でやらなければいけない

ーー プロトコルはできちゃうのかもしれないですが

“ピュア”はちょっとありえない

ーーリアルを絡めちゃうとピュアにはいかないということですね

“ピュア”って、ブロックチェーンの世界はない

ビットコインはほぼほぼピュアに近い分散性を持っているが

それでもビットコイン・コア(Bitcoin Core)という、すごく小さい開発コミュニティでやっている

分散しているかというと、ほとんどの人はそんなコードは見たってわからない

ーーそうですよね。マイニングやっている人たちも、10人くらい集まればマイニングをコントロールできちゃうみたいな

世界のマイニングパワーのシェアを全部とられちゃうみたいな

「それって分散しているの?」みたいな話で言ったら

ピュアはない

ーースペクトラムのどの辺りに位置するかは業界によって変わる?

これはトライ&エラーをやらないと

ここに対しての研究が全然なされてない中で

本当は社会的リソースがもっとそこにいっても良いのではないかと思う

特にアカデミアとか

ーーアカデミアでもっと研究すべき?

研究すべき

ーー経営学でその辺りは研究しても面白いかもしれないですね
もちろんハーバードビジネスレビューみたいな
事例はいっぱいこれからでてきて、それを集めた学問は出てくるかもしれないですけど
もっと学問的に「こういう風な場合はこういうDAOが良い」という研究してくれる人は出てきてくるかもしれないけど
今のところないかもしれない

そうですよね

ーーありがとうございました。大変面白かったです

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この記事を書いた人

人ひとりが自分な好きなこと、得意なことを仕事にして、豊かに生きる。 そんな社会に向けて、次なる「The WAVE」を共に探り、学び、創るメディアブランドです。

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